便利すぎない暮らしがいい。
2015-09-15
初めての移住者インタビュー。今回は昨年、住まいを紹介させていただいたブルヒン家のランチタイムにお邪魔してきました。いいお天気の今日は、お庭でランチです。
ブルヒン家はご両親と2人の男の子の賑やかな4人家族。スイス→日本で仮住まい→直島と、暮らしがどのように変わってきたのでしょうか。まず、直島へ移住された経緯を伺いました。
「日本と私の国(スイス)や海外を繋ぐような、アート関連の仕事をしたいと思っていたところ、タイミング良く福武財団の仕事に就くことができました。」
発端は旦那様のお仕事。公益法人福武財団への就職が決まった事でした。直島を選んだのは、約10年前に旅行で訪れた際に直島での暮らしに興味を持った事が始まりだそうです。
国内外で暮らした事のあるご夫婦は、美術館やアートワークを巡り、世界を見ても他にこんな場所はない!と感じたそうです。加えて、のんびりとした田舎の暮らし。
スイス生まれのトーマスさんは、日本の職人の技術や技を極める過程に興味があり、女文楽からもそういった日本の職人文化を感じているとおっしゃいます。
一方、奥様の早恵さんは、子育て環境について求めるものがありました。
「日本に来てすぐ直島に住もうと思いましたが、島内に家が見つからず半年間は島外に仮住まいをしていました。スイスでは子供が自然の中で伸び伸びしていたのですが、その時は自然も少なく、スイスとのギャップがかなりありました。それから直島に来て、自然や地域みなさんの温かい環境の中で子育てが出来るようになり、ほっとしています。また、便利すぎない、そして情報が溢れすぎていないところが子供にも大人にもいいですね。」
不便と捉えず、便利すぎないところがいいという早恵さん。家族で直島の様々な環境を楽しみなが暮らしていることが伝わってきました。
それでは、海外からの移動ということもあり、移住に関して心配事はなかったのでしょうか。
「母親としては、子供の医療が心配でした。風邪などであれば診療所で診てもらえますが、何かあった時のために、スムーズに専門医に行き着くようなシステムがあるとうれしいですね。」
直島町には町立ふれあい診療所があります。診療科は小児科、内科、外科。待たずに診てもらえることが多く助かりますが、専門医となると船やバスを乗り継いで島外へ行かなくてはなりません。
「それと、主婦目線からすると日常の買い物を心配していたのですが、基本的なものはある程度島内で揃いますし、ネットショッピングも有効です。最近はご近所の方からいただき物をすることもあります。」
直島で暮らし始めて半年というブルヒン家。あっという間に地域になじんでいるようです。そして、住んでから気づく事もあります。
「昼間は賑やか、夜は静か。住んでから島の日常が見える様になりました。」
とトーマスさん。移住までのお話を伺ったところで、ブルヒン家が暮らし始めるまで空き家だったお部屋の中も拝見させて頂きました。
では、住まいについてはどうでしょうか。
空き家で暮らし始めるには、色々苦労もあったかと思います。
「スイスでは約100年前に建てられたレジデンスに住んでいました。スイスの家もよかったのですが、僕にとって今の住まいは木が至る所ところに用いられていることが興味深いです。光も程よく入って来て、人間的な暮らしができます。笑」
室内にお邪魔すると、床の間や梁などに絵や子供の手形などが楽しく飾ってあります。日本人に思いつかない工夫や発想がすてきです。また、小さな心遣いから、早恵さんの日々のお手入れが行き届いていることが伺えました。
「ここまで来るには、畳を変えたり、障子を貼り変えたり、大掃除をしたりしましたよ〜。今の季節はお庭の草との戦いでしょうか。笑もちろん、それらが楽しい部分でもあります。」
縁側も広々していて、晴れた日は心地よさそうですね。
お庭では、やさいづくりやメダカを育てるなど、子供達の楽しい学びの場にもなっていました。近所の子が帰ってくる時間になると、子供達の声でお庭が賑やかになることも多いそうです。
「近所の人が自然と声をかけてくれる環境で、母親としても安心感があります。親切にしていただき助かっています。」
直島内でも集落によって雰囲気は違いますが、どの集落でも比較的気軽にお話をしてくださる方が多い様に思います。
トーマスさんのお仕事と、家族の暮らしが落ち着いてきたところで、早恵さんはやりたいことがあるそうです。
「何か自分のプロジェクトを持ちたいと思います。まだわかりませんが、自宅で出来る事があればいいです。」
私が1年程前に初めてこちらのおうちに伺った時は、まだ空き家でした。比較的きれいな空き家でしたが、人が暮らすことで空間にどれほどの命を吹き込むのか、今日は肌で感じる事が出来ました。
スイスと日本の暮らしのアイディアがつまっている、賑やかなブルヒン家。便利すぎず、自然に親しみながら日々の暮らしを楽しんでいらっしゃいました。空き家だった住まいも、今ではとっても喜んでいます。